風邪で抗菌薬飲みますか?

ちょっと過激なタイトルですが、今回は薬局薬剤師からの視点で薬代の節約に焦点を当てて考えてみます。

薬代の節約といっても必要な薬を飲まないことはのちに結局節約にならなかったとなりかねませんので必要な薬はしっかり飲みましょう。

しかし、現実問題としてその薬は本当に必要なの?という薬も服用されている現実もあります。

ここで勘違いして欲しくないのは、ご自身が飲んだほうが体調がいいというなら飲めばいいと思います。

何も効くという証拠はないから飲まないほうが節約にもなるしいいよ!というつもりはありません。

しかし、勘違いなどしている場合に現時点でわかっている情報を共有してもらい飲まないという判断も大いにあり得るという観点から個々人に後悔のない判断してもらえたらと思います。

そしてその判断の材料の一つとして個人的には費用対効果も入ってくると思いますので、節約という観点からも考えてみたいと思います。

と注意事項はこれくらいにして、まず最も一般的な「風邪」について考えてみましょう。




風邪の原因

まず、日本呼吸器学会のホームページを見てみると「かぜ症候群」という項目があります。

いわゆる風邪というのは鼻から喉にかけてを上気道といいますが、この上気道に急性の炎症を起こしている状態をいいます。

鼻水が出る、喉が痛い、咳が出るといった状態ですね。

このかぜ症候群の原因は80〜90%がウイルスが原因とされています。

そのウイルスもたくさん種類がありますが、今回は割愛します。

一部、細菌感染のこともありますがその割合はそんなに高くはありません。

かぜ症候群に抗菌薬?

いわゆる風邪と病院で診断されて、薬局で抗菌薬を受け取った覚えがある人も多いのではないでしょうか?

上記でかぜ症候群の原因はウイルスと書きましたが、抗菌薬はウイルスには効きません。

これはもうネットなどで少し調べるとすぐに出てきます。

ではなぜ、抗菌薬が処方されるのかというと、一般的にはかぜ症候群の時に細菌の二次感染による重症化を予防するためと言われています。

抗菌薬の二次感染予防目的での服用のメリットとデメリットは?

私たち薬剤師は常に患者さん個々の薬を飲むこともしくは飲まないことによるメリットとデメリットの程度を天秤にかけていますが、今回の二次感染予防目的で服用する抗菌薬のメリットはどれくらいでしょうか?

2つの論文を参考にしてみますが、もちろんこれだけで判断はできません。

しかし、なんとなくそうかもと思うことができると思います。

まず1つ目は、中耳炎後の乳様突起炎、喉の痛み後の扁桃炎、上気道感染・胸部感染後の肺炎を予防できるかを検討したものですが、結果は予防できなくはないけどNNT4000という結果でした。

NNTというのはnumber need to treatの略でちょっと解釈が難しいのですが、ものすごく大雑把に捉えると4000人が二次感染予防の目的で抗菌薬を飲んだら1人予防ができたという感じです。厳密にいうとこの言い方はおかしいのですが、今回はまあそこは突っ込まないということで…。(笑)

高齢者の場合の肺炎予防はNNTが39とまあまあ効果は期待できるかもしれませんが、若い人はNNTが96~118という結果です。

(参考文献:BMJ. 2007 Nov 10;335(7627):982. Epub 2007 Oct 18.)

もう1つを見てみると、こちらは急性の呼吸器感染症の人に抗菌薬を投与した場合の有害事象と肺炎による入院頻度を検討したものです。

有害事象というのは、厳密には副作用と違って薬との因果関係はわからないけどとりあえず薬を飲んで起きた嫌な症状と思ってください。まあ、副作用みたいなもんです。

結果はというと、肺炎による入院は減らしたものの、そのNNTは12,255人と決して高いメリットがあるとは思えない数字となっています。

一方の有害事象に関しては、差が見られないという結果だったのですが、下痢などする方もいますからね…。

(参考文献:Ann Fam Med. 2013 Mar-Apr;11(2):165-72. doi: 10.1370/afm.1449.)

抗菌薬を飲まないことによる節約効果

今までの話を踏まえると、かぜ症候群で抗菌薬を飲む必要がある人はだいぶ少なくなるのではないかと思います。

もちろん全員が飲まなくていいわけではありません。

しかし全員に毎回必要か?と言われるとそこまでではないと思います。

私個人の経験からですが、一般的にかぜ症候群に用いられる抗菌薬は、

  • メイアクト
  • フロモックス
  • セフゾン
  • クラリス
  • クラビット
  • ジェニナック
  • グレースビット

あたりが多い印象です。

それぞれの薬価と1日あたりの値段を見てみると

 薬価ジェネリックの薬価1日あたりの値段1日あたりの値段(ジェネリックの場合)
メイアクト46.432.2139.296.9
フロモックス46.128.0147.384
セフゾン58.631.9175.895.7
トミロン38.8ジェネリックなし116.4
クラリス(クラリシッド)67.9(69.4)28.1135.8(138.8)56.2
クラビット381.697.0381.697.0
ジェニナック214.8ジェネリックなし429.6
グレースビット169.385.9338.6171.8

※成人に一般的に使用される量で計算しています。

※クラリスはクラリシッドという名前の薬もありカッコ内にその薬価などを記載しています。

このようになります。

だいたいこの薬を4日ないし5日服用するので1回の風邪で500〜2,000円になりますね。

この1〜3割負担だと150〜600円になります。

年間どれくらい風邪をひくかは人それぞれ、その時々で違いますが、医師に診察してもらう時に「必要なさそうであれば抗菌薬いりません。」というだけで数百円の節約になるわけです。

今回は、すでに長くなっているので紹介しませんがいわゆる風邪薬というのも実は効果は微妙かもしれないという研究が多くはっきりしません。

風邪薬というのは風邪のつらい症状を多少和らげてくれるくらいの効果で、少なくとも病院にかかり風邪薬をもらった方が早く治るという確証はないです。

個人的な風邪に対する節約法

個人的な意見を言わせていただくと、病院で風邪以外の病気の可能性があるのかないのかを診断してもらうのはいいことだと思います。

風邪に似た症状で実は違った!ということはあります。

しかし、風邪と診断されたのであれば薬は飲まなくても治ります。

先日の記事のように、風邪薬も少しでも安い薬局を探して〜とかする前に、自宅で安静にするというのが最も効果的な節約と言えるでしょう。

また、風邪なら薬いらないですというと処方箋も発行されないので、たぶんですが病院での支払いも少し安くなると思います。

医療や健康での節約を考えるのであれば目先の安さに捉われずに判断していただきたいと思います。

ちなみに、厚生労働省が作成した抗微生物薬適正使用の手引きという資料の中にもバイタルサイン(頻呼吸、意識障害、低血圧)の異常がなく、気道症状ありで鼻、喉、咳の症状が同程度であれば抗菌薬不要というフローチャートもあります。

もちろん医師の診断が優先されますが、抗菌薬は絶対必要ではないのです。




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